日本語の論文もBibDeskで整理


BibDesk は海外で開発されていて、日本語の文献についてのサポートは十分ではありませんでした。でも、文字コードとして UTF-8 がサポートされてからは、あまり不便もなく使えるようになりました。でも、日本語の文献を扱うためにはちょっと設定が必要になるので紹介します。

* BibDesk のファイルの文字コードを UTF-8 に

まず、BibDesk が扱うファイルの文字コードを UTF-8 にしましょう。BibDesk は SJIS もサポートしているようなのですが、UTF-8 を使えば日本語を扱うのに都合がよいだけではなくて、英語圏以外の人の名前を書くのにも都合がいいので便利です。たとえば、Mireille Ducassé とか Robert Görke のような著者名があったときに、UTF-8 でない場合には英文アルファベットにない文字を書くのに LaTeX のマクロを使って Mireille Ducass’e とか Robert G:orke のように書かなくてはならないのですが、UTF-8 ならばこのようなことに頭を悩ませるまでもなく、論文からそのままコピー&ペーストできます。

文字コードの設定方法はとても簡単です。BibDesk の環境設定から ”Files” タブを開き、”Open and export BibTeX files using encoding” から Unicode (UTF-8) を選択するだけです。

* Yomi フィールドの追加

日本語文献について bibtex を使うためには、標準の bibtex ではなく pbibtex とか jbibtex (以後、日本語 bibtex と呼ぶことにします)と呼ばれるコマンドを利用します。日本語 bibtex が標準のものに対して拡張しているのは、日本人の漢字で書かれた名前を名前順に並べる機能です。このために、日本語 bibtex に日本人の名前の読みを教えるための ”Yomi” という項目を使います。

もちろん、このような日本人ローカルなフィールドのことは海外の開発者は知らないでしょうから、BibDesk もドフォルトでは Yomi フィールドを表示してくれません。というか、Yomi フィールドはそもそもサポートされていません。

それでも、BibDesk が偉いのは、標準にはないフィールドでも自由に追加することができることです。そのやり方も簡単です。BibDesk の環境設定で ”Default Fields” タブを開きます。この画面の ”Custom BibTeX Fields” の欄の下の ”+” を使って Yomi フィールドを追加します。フィールドの ”Is Default” は、各文献の項目についてデフォルトでこのフィールドを表示するか否かというものです。もちろん、Yomi についてデフォルトで表示するようにします。

Yomi 以外にも、私がデフォルトで表示させるように選択したものは Doi です。Doi は論文の URL のようなものです。普通の URL の場合、出版社がウェブサイトを改修したり、別の出版社に買収されたときに大幅に変更される恐れがあります。一方、Doi は出版社とは独立に管理されているために、そのようなことが置きても永続的に文献に対応した URL が見つかるような仕掛けになっています。ですので、私は雑誌論文については、できるだけ Doi を記録に残すようにしています。

* 日本語文献の登録

さて、設定準備ができたので、日本語の文献を登録してみましょう。登録の方法は基本的には海外の文献と同じです。一点だけ異なるのは Yomi フィールドを追加することです。Yomi フィールドには、Author フィールドに書かれた人々の名前を欧米風に書きます。日本語 bibtex は Yomi フィールドが設定されている書誌情報については、Author フィールドではなく Yomi フィールドを用いて、文献を並べます。

* 少し困る点

BibDesk はきちんと日本語に対応しているわけではありません。日本語というか、日本風の名前の書き方をサポートしていません。ですので、表示の上ではいろいろおかしなことになります。たとえば、氏名の順序が日本人と欧米人では逆になります。BibDesk もこの点について混乱します。

上の図においても、右下に著者名のリストが表示されていますが、日本人だけは名字ではなく名前が表示されてしまいます。表示はおかしいのですが、bibtex ファイルの形式としては問題はありませんので、あまり気にしていません。((BibDesk の開発元に正式に Yomi フィールドをサポートしてもらいたいと申し入れるのも説明が面倒だし、逆にお前が開発しろと言われそうなので黙ってます。誰か元気な日本人が直してくれると嬉しいです。))

* 日本語 bibtex についてあまり理解していないけど

Yomi フィールドのところで、氏名の読みをローマ字で表記しました。このようにすると、bibtex を通したときには文献リストで日本語の文献とそうでない文献が混在し、アルファベット順に並びます。Yomi フィールドにローマ字ではなく平仮名で表記すると、日本語の文献は五十音順になってひとつの塊を作り、Yomi フィールドがない文献はアルファベット順になって別の塊を作るのではないかと思います。後者は試していません。出版文化の違いになると思いますので、みなさんの投稿先の学会の規定にしたがって管理なさるとよいと思います。

もしかすると私が知らないところで、平仮名の読みとローマ字の読みをともに設定できる仕組みもあるのかもしれませんね。ご存知だったら教えて下さい。

日本語の論文もBibDeskで整理」への2件のフィードバック

    • はじめて耳にしました。名古屋大学の方が開発なさっているんですね。とすると、日本人の名前の扱いはもっと上手かもしれませんね。モデルの bibtex が共通だからかもしれませんけれども、二つのソフトよく似てますね。

      bibcompanion の複数のデータベースにまたがる検索は便利そうです。私は、データベースの大きさがあまり大きくなると不安定になるのではないかと心配して年初に空のデータベースを作っています。このため papers08.bib, papers08j.bib, papers09.bib, papers09j.bib みたいなのができてます。これらに対する横断的な検索ができると便利だと思っているのですが、bibcompanion ならこの要望に答えてくれそうです。

      BibDesk で強力なのは、ネット上の文献データベースのサポートです。組込みのウェブブラウザがあって ACM/DL とか Google Scholar の書誌情報を取り込む機能があるんです。

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