昨夜、前学期の成績を報告しました。今週は月曜から木曜まで大学院入試で、ぼくの手帳によれば成績報告の締切は昨日ということになっていました。今学期にぼくが担当しているのは、一年生向けのコンピュータリテラシ3クラス分、約230名の成績です。ただ、今学期はI類とVI類向けに学期途中でのクラス編成替えなどという、学生にとっては嬉しいかもしれないけれども、教員にとってはややこしいことをやってしまいました。このため、自分のクラスだけでなく、I類とVI類の全クラスの集計も引き受けたために、結局、僕を通して成績を報告したのは、I類とVI類の全学生、VII類の半数の学生ということで全部で400人以上になったのではないでしょうか。文系の先生はもっと多いかもしれないけれども、ぼくとしては最高記録です。
昨年度から、東工大も遅ればせながら教務情報システムが導入されて、成績もウェブから報告することになりました。以前は、まず自分で学生名簿を Excel で作成し、そこに課題の点数を記入し、集計したものを、報告用紙に手書きで転載するという誠に面倒なことになっていたのですが、教務情報システムによって、履修者名簿は自動的に作成されるし、自分の Excel の表からコピー&ペーストで報告も出せるので作業がとても簡単になりました。ありがたいです。
今年のI類向けの最終課題には、授業の感想も書いてもらいました。大学でもマークシート方式の授業評価をしているのですが、学生の生の声が聞けるのは嬉しいです。学生のみなさん、ちゃんと読みましたよ。今年のクラス入れ替えは、学生さんたちのモチベーション向上に役立ったような気がします。
I類向けのコンピュータリテラシは、(そのあと授業が少ない)水曜の1限ということもあり、以前は遅刻が多く、やる気が少ない学生さんが目立ちました。今学期の試みは、「いくつか異なるテーマの授業を開講するから、自由に選択していいよ」という感じでした。わたしが担当したのは、MIT Scratch を使った、プログラミング実習でした。始めての試みだったのですが、感想からすると割り合いに好評でした。「プログラミングは難しいと思っていたけれども、意外にもすんなり入り込めた。でも、やっぱりプログラミングの奥は深そうなこともわかった。」という感想が多かったです。人によっては、実際にやりたかったけれど、実現できなかった内容などを書いてくれた人もいました。
学生さんたちが作ってくれたプログラムもすべて目を通しました。作ってくれたゲームはすべて遊びました。物語をアニメーション仕立てで作った人も少しいました。きれいな図形を描画する人もいました。授業のなかで紹介した仮想機械を拡張して、独自の描画機能を使って複雑な画像を書いた人もいました。なにかの機会にどこかで紹介したいですね。多くの人がプログラミングの楽しさを体験してくれたみたいで嬉しいです。授業を担当した私も、楽しかったですよ。
今回の実習では Scratch を単なの子供の遊び道具以上のものとして使うために、巨大システムの構成とからめて講義をしました。細かくは書きませんけれども、Structure and Interpretation of Computer Programs の全編を通して語られている思想:「巨大なシステムを構成するためには、基本部品、部品を組み合わせること、そして組み合わせたものをより大きな部品として提供するための抽象化が大切だ」を伝えようと思いました。3回の実習でどこまで実践できたか自信はありません。でも、やっているうちに、プログラム=データ、チューリングマシン、自己反映計算のような魅力的な課題も扱えるのではないかと思いつきました。ここまで扱うのはコンピュータリテラシの範囲を大きく越えてしまいますが、いずれ「Scratch を使った計算機科学」みたいなことに取り組んでみたいです。
VI類とVII類の学生にはプレゼンテーションの講義と実習をしました。この講義は個人的にはかなり力を入れていて、学生さんたちもその授業の回はいつになく熱心に聞いてくれるのですが、実習にそのことを応用してくれないのがやや悲しいです。どうしたものかが今後の課題です。
かなり大変でしたが、すべてのスライドに目を通しましたよ。力のこもったスライドが目立ちました。よくできていると思いますけれども、授業のなかでお伝えした技術を活用してさらに、インパクトのある発表ができるようになって下さい。強いてひとつ挙げるなら、”コントラスト”に注意するとよいでしょう。聴衆の腹にガツンとくるような発表を目指して下さい。
昨夜、ようやくすべてのクラスの成績報告をして余裕ができて、教務情報システムの上の方を眺めていたら、なんと本当の締切は来週の月曜の早朝なんですね。どうもサボりがちな自分を認識して、手帳には三日前の日付で記入していて、そのことを完璧に忘れていたらしいです。
でも、おかげでこの週末は採点作業をしていません。偉いぞ、自分。