TeX Writer というLaTeXのエンジンを組み込んだタブレット用のソフトがあると聞いて少し試してみました.TeX Writerを起動し,新しい文書を作成すると執筆画面が出てきますので,そこで普通に執筆作業を行います.LaTeXで処理したくなったら,画面上の右向き△を押すと処理が始まります.うまく行ったら,その隣のバス停っぽいボタンを押せばPDFを閲覧できます.エラーで失敗したら,ノートのような記号が赤くなります.エラー行をクリックすると執筆画面の該当箇所が表示されるので,間違いの修正も簡単です.
TeX Writerは基本的にはオフラインで動作します.ですから,ネットのないところでも問題なく執筆作業ができます.ネットがあると思わず気の散る人にはお薦めです.
TeX Writerで作成したファイルはDropboxのフォルダと同期することができます.もちろん,同期にはネット接続が必須です.
ここまで読むと「TeX Writer素晴しい」(実際,すばらしいんですけど)と思うかもしれませんが,日本語にはぼくらが思ったようには対応していません.何が問題かというと,組版エンジンがptexではなく,pdftexだという点です.そのため,ptexのために開発されたjsarticleなどを利用することができません.
技術的なことを書くと,読む人がいなくなると思うので,ひとまず省略して,簡単な解決法を紹介します.
iPadの場合
( 他のiOSでも利用できると思いますが,iPhoneでTeX Writerを使う人はあまりいないでしょ?)
設定作業
- iPadのSafariで日本語化のためのZipファイルを開く.
- もちろんSafariでZipファイルは開けません.Safariが文句を言うのでTeX Writerで開きます.
- なにやらファイルのリストが表示された画面になります.右上のDoneを選択します.この操作によって,TeX Writerのデータ領域にZipファイルが保存されます.
- TeX Writerのファイルブラウザで眺めるとja-texwriter.zipというファイルが見えるはずです.これを開くとすぐに”ja-texwriter.zip unpacked ok”と表示されます.Zipファイルを展開したということです.Zipファイルには,TeX Writerにjsarticle.clsのような働きをさせるための設定とそれを利用するための雛形のファイルが含まれています.
使い方
準備が整いましたので,TeX Writerで新しい日本語のTeXファイルを作成してみましょう.最初から自分で書いてもいいのですが,雛形を用意しておきましたので,それを使ってみましょう.Newボタンで新規文書を作成するときに,Use bxja-article.texを選択してみて下さい.これが日本語の文書の雛形です.適宜,ファイル名をつければ執筆できます.
先頭の部分がちょっとかわっていますが,あとは大体普通に使えるんじゃないかと思います.Beamerを使って,日本語でのプレゼンをしたい方はUse bxja-beamer.texを利用して下さい.
Androidの場合
- 脇田はAmazon Kindle Fire HDX 8.9を利用しています.Kindle FireではGoogle Playが利用できないので,他のAndroidタブレットと動作が異なる可能性があります.
以下はGoogle Playが利用できないKindle FireユーザのためのTeX Writerのインストール方法の簡単な説明です.
Kindle Fireをお持ちの方は,TeX Writerのサポートサイトから購入することができます.購入すると,TeXWriter-v1.6.1.apkへのリンクがメールで届いたので,それをパソコンにダウンロードし,Dropboxに保存したものをKindle FireのDropboxアプリから開いてインストールしました.もしかしたら,Silkブラウザでリンクを開いて,インストールできるのかもしれません.適宜やってみて下さい.
さて,TeX Writerのインストールができたら,iPadと同様に日本語化のためのZipファイルをTeX Writerのデータ領域に保存すればいいのです.ただ,まだ開発版と思われるTeX Writerは,iPadのようにZipファイルを開いて展開する便利な機能がまだ実装されていないようです.このため,TeX Writer以外の他のツールを用いてファイルを適切に展開しなくてはなりません.
要はZipファイルを展開するだけなので,重要なのはどこで展開するかという一点です.Android版のTeX Writerのファイルブラウザの画面の中央に二つのアイコンが並んでいます.左が角のとれた長方形で,右がDropboxです.左はTeX Writerのシステム領域で,こここそ今からZipファイルを展開したい場所です.わたしのKindle Fireの場合,TeX Writerのシステム領域は/storage/emulated/0/Android/data/com.litchie.texwriterです.この場所は他のAndroidでも共通なんでしょうか?
Zipファイルを展開するためには,DropboxのAndroidアプリからZipファイルを開き,ES3というファイルブラウザに受け渡し,前述のシステム領域に展開しました.
iPadに比べてちょっと面倒なんですが,落ち着いてやってみて下さい.日本語の文書の執筆方法はiPadと同じです.
Zipファイルには,BXjsclsパッケージ(開発版)とBXcjkjatypeパッケージ(開発版)に加えて僕が作った雛形がはいっているだけです.二つのパッケージはいずれもTeXliveに収録されているのですが,TeX Writerで動作させるには開発版が必要なようです.