今年も大学入試の季節がやってきました.ぼくは昨年に続いて,今年も午前は数学,午後は英語の試験監督を務めました.
昨年の監督では,英語の試験の内容に驚かされました.「うちの大学の英語の試験って,こんな長文を出してたっけ?こんなに難しかったっけ?こういう内容を扱うんだっけ?」とても印象深かったので,今でも第一問が多国籍企業の一般企業活動の圧迫で,第二問が涙を流す行為の合理性だったことを覚えています.
今年の英語の試験もまた内容の濃いものでした.第一問は7ページの長文で睡眠がテーマでした.第二問は2ページで「エビデンスが与えられた事実」の信憑性に関する内容でした.どちらも面白い記事だったのですが,睡眠については僕もはじめて知った内容で,監督だったことさえ忘れて読みふけりそうになってしまいました.
記事は中世の夜の描写で始まります.いかに昔の人々が暗闇を恐れ,暗闇のなかでさまざまな恐しいことが実際に起きてことが描かれています.自然,陽が落ちれば,人々は家々の扉を固く閉じ,早々に眠りにつきます.でも,その眠りが現代人のそれとちょっと違うというのです.昔の人々は,暗くなってからしばらく寝て,やがて真夜中に目覚めて活動したのだそうです.瞑想したり,読書したら,書き物をして.また眠くなったらベッドに戻り,二度目の眠りについたのだそうです.
この眠りの習慣は中世の欧州に偏在していたわけではなく,他の文明世界やその言葉にも見られるようです.また,現代人も都市から隔離し,灯りのない生活を始めると数週間後には,誰にも言われなくても二つの眠りの習慣に移行するという実験もあるのだそうです.
ぼくらは今,真夜中近くから一気に7〜8時間くらいを寝るし,そうでなくて真夜中に目覚めると病気でないかと心配になるけれども,もしかすると一気に長時間眠る方が不健康なのかもしれませんね.
さてさて,受験に備えて,もしかしたら睡眠時間を削っていた受験生たちはこの文章をどのように読んだんだろう?いずれにしても,よく健闘して,実力を発揮してくれていたらいいですね.
書き忘れました.原文は以下です.
David K. Randall, “A Tale of Two Sleeps,” Muse, May/June 2013, pp. 6-12.